2021年(令和3年)2月22日(月曜日)、「おおさか気候変動適応センター成果発表 どうなんの?どうしたらエエの?気候変動適応~環農水研シンポジウム~」を開催しました。205名の皆さまに参加申込をいただき、オンラインにて実施いたしました。ありがとうございました!
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開会
開会のごあいさつでは、理事長の石井よりオンラインにて、気候変動に関する最近の状況や、環農水研の第3期中期計画で気候変動適応をテーマに挙げていること、4月に「おおさか気候変動適応センター」を設置したことなどをご紹介しました。
会場では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策を実施の上で、6名がお話ししました。
中央テーブル左側
…コーディネーター:日下部理事
中央テーブル右側
…司会:おおさか気候変動適応センター(環境研究部・技術支援グループ)小谷グループリーダー
右テーブル左側
…ナビゲーター(農業):食と農の研究部・園芸グループリーダー 森川主幹研究員
右テーブル右側
…ナビゲーター(水産):水産研究部・水産支援グループリーダー 大美主幹研究員
左テーブル右側
…パネリスト:大阪府環境農林水産部エネルギー政策課 田村課長補佐
左テーブル左側
…パネリスト:おおさか気候変動適応センター(環境研究部長) 木田センター長
また、オンラインにて、お二人の有識者にご参加いただきました。
ナビゲーター(自然生態系):大阪府立大学大学院生命環境科学研究科 教授 平井 規央 様
総合コメンテーター:国立環境研究所 気候変動適応センター 気候変動影響観測・監視研究室 室長 西廣 淳 様
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セッション
セッション「農業」
セッション「農業」では、まずおおさか気候変動適応センターから、環境省委託事業で調査した府域の状況をご紹介しました。
・おおさか気候変動適応センター成果発表(農業)
・水稲への影響(苗への灌水が増加、一等米比率の減少、白未熟粒の増加)
・果樹への影響(ブドウ着色不良の発生、ミカンの焼け果の発生)
・野菜への影響(水ナスのつやなし果の増加、ナスの焼け果の増加 など)
・作業中の暑さの影響(下草刈りなどの作業が負担 など)と適応策(ファン付き作業着、作業時間を早朝や夕方にずらす、熱中症予防の注意)
次に、森川ナビゲーターより、気候変動適応に対応した環農水研の開発技術をご紹介しました。
・ブドウ栽培ビニールハウスの自動開閉装置
・大阪の作型に応じた、暑さに強い水稲品種の選定
・スマート農業(細霧冷房などを利用した複合環境制御技術など)
セッション「水産業」
セッション「水産業」でも、おおさか気候変動適応センターから、環境省委託事業で調査した府域の状況をご紹介しました。
・おおさか気候変動適応センター成果発表(水産業)
・最近の漁の状況(漁獲量は、いかなご・シャコ・マコガレイが減少、さわら・ハモが増加し、暖かい海に生息するアイゴによる養殖ワカメの食害が見られるようになった)
・作業の暑さの影響(日中に船の整備をするのが困難、製氷機の能力が足りない、氷が溶けやすい)と適応策(エアコンの設置、深層の低温の水を利用、日よけ屋根を設置 など)
次に、大美ナビゲーターより、大阪湾の現状と環農水研の取組などをご紹介しました。
・水温だけでなく、水中の酸素の量、栄養塩、黒潮の流れなどの要因も、魚介類の漁獲量や海産物養殖へ影響。
・45年間(1972年から2016年)の季節別の水温変化では、大阪湾の水温が秋冬(11月から12月)に下がらない傾向。魚群の移動や産卵のタイミング、海産物の養殖期間にも影響する可能性がある。
・環農水研では適応策として、ワカメ養殖について良質の種糸を提供する技術などを開発。
また、田村パネリストからは、大阪府の暑さ対策に関する取組をご紹介いただきました。
・「大阪府猛暑対策検討会議」にて意見をとりまとめ、暑さから身を守る3つの習慣「涼む」「気づく」「備える」について府民の皆さんへの周知などを進めている。
・外出先の涼しい空間を提供する「クールオアシスプロジェクト」を、企業などの協力により実施。
・環境省の「暑さ指数(WBGT)メール配信サービス」などもご利用いただきたい。 …など
セッション「自然生態系」
セッション「自然生態系」でも、引き続き、おおさか気候変動適応センターから、環境省委託事業で調査した府域の状況をご紹介しました。
・気候変動を考えるきっかけにしてもらうため、生き物観察イベントを開催(計3回)。
・参加者の子どもたちにアンケートなどを実施。
・観察会や過去の調査報告書などのデータを整理したところ、気候変動による直接の影響は確認されなかったが、大阪府レッドリスト記載の生き物などの今後の推移に注意が必要と思われた。
次に、平井ナビゲーターより話題提供いただきました。
・ナガサキアゲハ、タイワンウチワヤンマ、ツマグロヒョウモンの分布が変化。海外に分布の中心を持つ日本では見られなかった生き物、ベニトンボ、クロマダラソテツシジミが関西や大阪でも見られるように。
・イネを食害するミナミアオカメムシが2000年代に大阪で分布拡大。
・スギの球果を食べるチャバネアオカメムシの発生は、花粉の発生量と相関があり、前々年の気温が影響。
・コブノメイガやトビイロウンカが海外から移入し、イネのつぼ枯れなどの被害が出る場合がある。
・数が減っている昆虫としては、コマルハナバチ、クロマルハナバチ、ヒョウモンモドキ、ギフチョウなどが挙げられ、注視していく必要があると考えらえれる。特定の樹種や植物をエサとするものは見守っていくべき。
自然生態系と気候変動については、西廣コメンテーターからもご意見をいただきました。
また、環農水研の生物多様性センターで実施中の企画展「気候変動でどう変わる?大阪の生物多様性と私たちの暮らし」についてご紹介しました(開催期間は令和3年5月28日まで)。
動画コーナー
特別ムービーは、YouTubeの研究所チャンネルで公開しております。
質疑応答コーナー
オンラインで、視聴者の皆さまから頂戴したご質問にお答えしました。詳しくは、シンポジウム特設ページをご覧ください。
http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/publication/symposium/
こちらのページでは、気候変動適応などの環農水研の最新の調査研究をポスターでご紹介しています。
アンケートでは、回答者の方のほぼ全員に「良くわかった」「概ねわかりやすかった」とお答えいただきました。
また、「地域や職場で使える知識が増えた」「初めてオンラインセミナーに参加したが、円滑な進行で内容も分かりやすかった」「新型コロナウイルスの外出自粛期間中でも参加できた」などのご感想もいただきました。
ご参加くださった皆さま、アンケートにご回答いただいた皆さま、ありがとうございました!
なお、参加者プレゼント「環農水研のおコメ・3kg」については、厳正なる抽選を実施し、ご当選の方に発送しました。