水産業

気候変動の影響

  • 秋季の高水温による養殖海藻類の養殖開始時期の遅延と養殖期間の短縮による生産量減少
  • 南方系の植食性魚種の摂食行動の活発化と分布拡大による藻場の減少
  • 有害・有毒プランクトンの北上による魚の毒化
  • 気温上昇による漁港や市場の施設への影響

これまでの調査の報告と将来予測

漁獲量
  • 大阪湾ではさまざまな水産物の漁獲量が増減しています。魚や貝、海藻などの水産物の資源量は、水温のみならず、栄養塩、栽培漁業による放流などの影響も受けるため、変化の原因を特定することが難しい面がありますが、大阪府の漁業協同組合への聞き取り調査から、近年の漁獲量が減少している魚種としては、イカナゴ、マイワシ、マアナゴ、シャコ、マコガレイ、アイナメが報告されています。一方で、漁獲量が増加している魚種としては、ハモ、ホウボウ、サワラ、キジハタ(アコウ)、クマエビが報告されています。(※サワラは令和2年まで、キジハタ(アコウ)は現在まで、種苗を放流する事業が実施されています。)
  • ワカメの養殖では、晩秋の養殖開始直後に高水温状態は続き、生育不良が発生しやすくなっています。
  • 水温が高くなることで、魚の脂ののりが悪くなったり、酸素欠乏で漁獲時に弱りやすくなったりしています。
  • 将来の水産資源については、回遊性魚類の分布回遊範囲や個体サイズの変化、内水面漁業ではアユの遡上時期の早期化や遡上数の減少などが予想されています。

春の訪れを告げるイカナゴ

有害、有毒プランクトン
  • 近年は、海水温の上昇により南方系のプランクトンが大阪湾にも入り込んでいることが指摘されています。有毒なプランクトンは魚介類を毒化させるため、釣った魚や採取した貝の喫食による中毒事故が発生する原因になります。また、有害なプランクトンは、魚を死滅させる原因となります。環農水研の調査により、2022年度には、有毒なガンビエールディスカス属(シガテラ毒原因種)とオストレオプシス属(パリトキシン様毒原因種)のプランクトンの存在を確認しました。

有毒なプランクトンであるガンビエールディスカス属(シガテラ毒原因種)

(西村博士*・足立博士(高知大学)撮影:*現所属:水産研究・教育機構水産技術研究所)

漁や市場などでの作業や設備管理
  • これまでは、夜半から早朝に漁に出て、日中は漁具の洗浄や船の整備をしていましたが、近年、日中の高気温下では船の整備ができないこと、夜半の操業でも空調服が必須であることなどが問題となっています。
  • 港の施設の高温対策としてスポットクーラーを導入しても、塩害によって破損しやすいため、環境改善が難しい面があります。
  • 夏期は、鮮度保持のために製氷機の稼働量を増加しても追いつかないほどの猛暑になっていることや、納品先で氷が少ないと言われることが増えるなど、これまでの設備や出荷方法では間に合わなくなっている状況も生まれています。

 

気候変動への適応策

漁獲量

■大阪の漁業者の取組

      • 海藻の養殖では、水温を測定しながら養殖を開始する時期を調整しています。
      • 漁獲物が傷むことを防ぐために、少し深いところの海水をいけすに利用したり、船上において氷でしめたり、海水が薄まらないように氷を容器に入れて同梱するなどの工夫を実施しています。

■環農水研の取組

      • ワカメ養殖の技術開発

ワカメ養殖では、従来は春にワカメの遊走子を糸に付着させ、春から秋にかけて屋内の水槽内で培養し種苗を生産していました。しかし近年の猛暑により、この養殖方法では夏の高気温によって枯死が発生し、良質な種苗を生産することが困難になっていました。

環農水研では、ワカメの新たな養殖技術(※)が既存の生産施設へも導入できるように改良を加え、2022年度にはマニュアルを整備して、生産者への技術移転を進めています。

※高温による生育不良や枯死の発生を回避するために、ワカメの遊走子を採取して得た「フリー配偶体」を、夏期は温度管理できる環境下で培養し、その後、人為的に糸に付着(塗布)させて良質な種糸(ワカメ種苗)を生産する技術

また、フリー配偶体の技術を利用して、優良な特性をもつ株同士を交配させることで、新たな高品質な養殖株の作出に取り組んでいます。

ワカメの種糸

フラスコでフリー配偶体を培養中

ワカメの配偶体液を刷毛で糸に塗布している様子

      • 養殖ワカメの食害対策

近年の海水温の上昇により、南方系の魚種が大阪湾でも確認されています。アイゴなどの海藻類を好む魚種が養殖中の海藻を食べてしまう食害被害が近年、全国的に大きな問題となっています。大阪のワカメ養殖の現場でも食害被害が発生しており、高水温化の影響により、その被害期間の長期化が示唆されています。食害種の出現と被害実態を解明するため、調査を行っています。

南方系の魚種 アイゴ

有害、有毒プランクトン

■環農水研の取組

      • 有害、有毒プランクトンの調査

長期間にわたり、大阪湾のプランクトン調査をしています。有害、有毒なプランクトンの侵入を早期発見できるよう、これからも継続的にプランクトン調査を行い、魚の毒化やへい死に関する情報提供につなげていきます。

漁や市場などでの作業や設備管理

■大阪の漁業者の取組

      • 作業時は、空調服を着用し、操舵室へのエアコンや甲板への屋根の設置を進め、熱中症予防の対策をとっています。
      • 市場では、電子入札で競りを行うことで水揚げから出荷までの所要時間を短縮させています。